トラウマとは
トラウマとは、「心的外傷」つまり心の傷のことです。一般的には、戦争体験や大災害の体験、性的暴行や虐待の被害などの経験がトラウマとして知られていることが多いですが、タイプⅡのトラウマとして、生育環境での言葉の暴力といった心理的虐待や、生育歴からのものばかりでなく大人になってからのDV(家庭内暴力)、セクハラ(性的嫌がらせ)、モラハラ(倫理的嫌がらせ)などの心理的虐待、失恋や大きな失敗など、劣等感を抱いてしまうような経験などもトラウマになり得ます。
そうしたトラウマ体験から、不眠やフラッシュバック、過度な怯えや恐怖感、パニックなどによって日常生活を送ることが困難な場合、「PTSD(Post Traumatic Syndrome Disorderの心的外傷後 症候群障害)」と診断されることがあります。
トラウマセラピーの流れ
※トラウマセラピーは、早くても3~4回目ぐらいになります。
トラウマセラピーは〈再体験〉→〈感情受容〉→〈描き換え〉という流れです。
まず、深呼吸から心身をリラックス状態にさせて、それから、そのときの様子、つまりトラウマ体験を心の中で〈再体験〉していきます。当時は感情に圧倒されていたはずですから、「あのときの感情」をよく味わうためには鮮やかな再体験が必要になります。そしてその感情を解放していきます。感じて解放するということは、そこに抑圧された感情があったということを認め、受け容れることになりますから、〈感情受容〉であります。
そこから、今度は〈描き換え〉といって、トラウマ経験の一部を描き換えていきます。もちろんそれはイメージの中でのことですが、為す術のなかった当時のトラウマ体験に対して、本当は伝えたかったことや、単にストーリーをよりポジティヴなものに描き換えるのです。自分の意志でやり直す・描き換えるということによって、悲惨な記憶は脳の中でネガティヴなものからポジティヴなものへ置き換えられ、自己イメージや他者との関係イメージなどに変化をもたらし、自分力が強くなっていきます。
さらに、〈描き変え〉に続いて、自分の意志による言動を日常生活で、これは多くの場合苦手な相手や特定の場面などに対してということになりますが、権利を主張する、はっきり伝えるなど、力強く表現していくための〈リハーサル〉も行います。このリハーサルは、現状のどんな場面でもっとどんな言動をしたいか・すればよいかという部分を実際声に出すなどして表現するのですが、これをすると「思い」が「身体」に伝わるので、現実生活での「行動」につながりやすくなります。
トラウマセラピーをしている心理セラピスト自体そう多くないと思います。その中でも実際行動と結びつけるために、セラピーに加えてこのように実際に声を出すなどして予行練習までしているセラピストというのは希少なのではないかと思います。